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二人の魔法使い01『ゴッドセフィ家に爆誕』

  • fortunehousefinan
  • 2015年12月23日
  • 読了時間: 5分

もし人が、世の中が平等なら争いがおきるはずもない。 そしてきっと私も生まれずに、生命は終わりを遂げたに違いない。 争えばいい 勝ち負けを競って 勝者も敗者も、それぞれの意思を掲げ誇りを持てばいい そしてまた競い合って、後世に遺して、死ぬまで争えばいい 人間はそうして進化してきたではないか。 ―――私は、最後の日記にそう書き込んだ。 思えば永い間私の人生と共にあった日記帳だ。 表紙はすすけて角は折れ、開けば埃の匂いがする。 覚えたての文字を書きなぐった絵日記が最初の方にある。 今の自分がそれを見たら、どんな気持ちになるのだろうか。 過去に指先で触れるような気分で、私は頁をめくるのだ。 ――――――――――。 『おかあさんにっき』 一文字一文字が別の色鉛筆が使用された豪奢な単語が最初に書いてある。 まるで昔の自由研究のタイトルでも見つめるような気持ちで私は瞬きをした。 『おとうさん  おかあさん  なかよし』 ――それは何より。 『おとうさん  おかあさん  けんかする』 ――おやおや。 『おとうさん  セナのこと きらい?』 ――………。 『セナは  おとうさんとおかあさん だいすきです』 ―――………。 ――……。 ―……。 降りゆく雪がその場で静止して凍りつくのではないかと思うほどそれは寒い夜。 イシュガルド貧民街の集落の一つ、ゴッドセフィ家に私は生まれた。 産声をあげる前にくしゃみをしたのだと、いつも母は笑っていた。 生まれた子供は、ドラセナ・ゴッドセフィ。 それが私の名前だ。 貧民街には珍しく、平民に近い食生活に恵まれる家庭で育った。 父、『ドラケーナ・ゴッドセフィ』はイシュガルドの兵士を務めているためその見返りは大きかった。 しかし私は10歳の誕生日にこの日記帳をもらうまでの間、父の姿を見たことはなかった。 母、『アナベル・サンパープル』と二人で暮らす。 生活が苦しいと思ったことはなかった。貧民街は友達がいっぱいいた。 私は引っ込み思案で、ぶりっこだったけれど、それでも仲良くしてくれていたのだ。 きっと私はここで、素敵な日々を過ごしていくのだと確信していた。 『明日、パパが帰ってくるわ』 母に頼まれた買い物にいく前に私はそう聴いていた。 私にはそれが楽しみでならなかった。 私のパパは、どんな人なんだろう? どんなお土産を持ってきてくれるんだろう? ママと3人で一緒に寝てくれるかな? 思い思いの考えをめぐらせていたせいで、その日の買い物は完全に失敗した。 私は信じられない量のじゃがいもが入った紙袋を両手に抱え、岩が風化するような速度で歩き家についたのだ。 鼻水が顎まで滴るのをぬぐえないまま、私は扉の前に立った。 ただいま、と声を発する直前、優しい声と泣き声が聞こえたのだ。 『アナベル、聞いてくれ。ウルダハは素晴らしい。この地もいいが、ウルダハはもっとだ。』 『ナナモ女王には正直、ピンと来なかったが。彼女の親族のさも美しいこと!』 聞こえてくるのは、母の泣き声だ。 私は、買い物を間違ったことに対し、母が悲しんでいるものだとばかり思い玄関前で右往左往した。 『俺はイシュガルドの密かな使者としてお近づきになれた!』 『お会いする約束も出来たのだ!』 『なあ、なあアナベル聞いてくれ。俺は―――。』 そしてこの聞こえてくる男の声は、誰のものだ? 私の憧れの、フォルタン家の近くでジャガイモを拾ってくれたあの人の声にもよく似ている。 母はまだ泣いている。母は、いじめられているのだろうか? 母を助けなければ。私はジャガイモと共に突進した。 家に飛び込んでくる私の姿より、瓦礫が崩れ落ちるようになだれ込んでくるジャガイモの存在に 中に居た二人は驚いたようだった。 一瞬時が止まって、母をいじめている男が私を鼠でも目撃したような目で見たことを、今でも覚えている。 『誰だお前は!汚い子供が、入ってくるんじゃあない!』 私は驚き、とうとう胸に抱えていた数少ないじゃがいもを取り落とした。 あああああ、ああああ、じゃがいもが。私は反射的に足元のジャガイモを拾い集めていた。 その間に母が何か男に小さく囁いていたのを私は聞き取れないほどに、足元の拾い放題に夢中だった。 拾おうとした1個のジャガイモが突如宙に浮き、いつの間にか私の前に居た男がそれを差し出しながら私に笑ったのだ。 『やぁ 怒って悪かったね。セナ、大きくなったじゃないか。』 先ほどまで悪鬼のように怒鳴り散らしていた男が、朗らかに笑って語りかけてくる。 同じ人物なはずなのに、私はもう一人誰かが増えたのかと思って周りを見渡すが、男と、母しか居なかった。 混乱する私にとてつもなく優しい片手が私の頭に触れた。 しばらくその様子を見守っていた母が、嗚咽交じりにぽつりと話した。 『あなたのお父さんよ。』 さらに信じられない真実を私は告げられ、完全に思考は停止した。 微笑みかけてくれる父に対し、私は不細工に笑って返した。 それから母は泣かず、お父さん…と呼ばれた人物も怒ることはなかった。 父は優しかった。いつも笑顔で、私が好きなジュースを毎日買ってくれた。 一週間もすぎたころ、母が泣いていたことも記憶からなくなりかけていた。 『…あの……。』 『なんだい?』 『パパと……ママと、一緒に寝たいの。』 父は優しいが、寝るときまで一緒にはいてくれなかった。 この一週間、いつも一緒に寝てくれていた母は父と一緒に寝ていた。 毛布に包まっても寒い我が家では、母の存在がそれほど貴重だったのだ。 母に言うと『もう子供じゃないんだから、一人で寝れるでしょ?』という。 ならばと、父と二人で買い物に出かけたとき懇願したのだ。 『そうだな……。』 じっと私を見ていたはずの視線をどこか遠くに移しながら、父は静かに語った。 『父さんはな、また遠くに行かなきゃいけないんだ。父さんは、母さんを愛してる。』 『セナはずっと、母さんを独り占めにしてきたろ?だから父さんもちょっとだけ母さんと一緒にいたいんだ』 『セナはもう大きい子だから、寂しいなんて言わないよね?』 『うん………うん………。』 父が言う言葉は難しかったけれど、なんだか父は正しいことを言っている気がしたのだ。 そうか、さびしいと言ってはいけないのか。 私が今学んだのは、それだけだった。 『ねぇ パパ。』 『ん?なんだい?』 『パパは、セナのことも あいしてる?』 父は、それまで見せてきた笑顔の中でもとびきり、魅力的な笑みで返した。 私はそれが嬉しかった。 ―――次の日、父はウルダハへ旅立った。


 
 
 
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