『二度目の初めまして』 エッダちゃんとの邂逅
※『エッダちゃん』以外はある程度フィクションです。 ※エッダさんの台詞のほとんどはFF14新生エオルゼアのゲーム内に存在するものです。 ※少しだけスプラッタな表現が御座います。苦手な方はお勧めしません。
こんにちわ。私は占いの館を担うファイナンです。 この館はたくさんの人に支えられ……今もこうして経営しています。 ご来館が1度きりの方もいらっしゃれば、何度か来ていただいている方もいます。 ……その中で私は1度だけ、心苦しい体験と、楽しい体験をしました。 どうか、今日はそのお話を聞いてはいただけませんか?
ありがとうございます。 ――あれは1年前……。
ここは商業の町、ウルダハ。 暁の一員になる少し前、その日は依頼は1日中依頼があり、疲れる1日でした。 宿に帰る前に疲れた体を癒そうと思い、わたくしはモモディさんの所へ寄りました。 クイックサンドのモモディさんはわたくしがウルダハに降り立った時お世話になった方。 そんなモモディさんから、紹介したい人がいるとお話がありました。
連絡先と名前を聞いて、私はすぐに懐かしい気持ちになりました。 彼女の名前は『エッダ』さん。 当時、サスタシャ侵食洞の入り口でお会いした冒険者の一人です。 そのときの彼女は私の声に耳を貸す余裕がないほど、仲間に対し献身的でした。 そしてその後起きた悲劇も、知っています。 ――かつてエッダさんを含めた4人のパーティは『タムタラの墓地』攻略の最中 リーダーの『アヴィール』は魔物の手により命を落としました。 その責任は『エッダ』さんへ強引に負わされ…パーティは散り散りに。 ………。 重い失意を受けた彼女を心配していましたが、モモディさんの話からは元気そうだと伺いました。 クイックサンドでゆっくりお話しするのもよかったのですが…… 私は彼女を、占いの館『ファイナン』へご招待しました。
『――用こそおいでいただきました。エッダ様。 ここは占いの館……わたくしはその主を務めます、ファイナンと申します。』 ―――ラベンダーベッドの一角のハウス。 本日お招きしたのは、『エッダ』様。 冒険ですすけたローブ、ところどころ傷の目立つ帽子 およそ化粧っけのない、しかし純真さが残る表情で、彼女は初めて訪れる館の内装を興味深そうに見渡します。 そんな彼女の胸には、かつて純白だったと思われる赤茶けた風呂敷の荷物らしきものが抱かれています。 ………おそらく、『アヴィール』様もご一緒なのでしょう。 座っていただいたエッダ様を前に一通り説明を終えると、彼女はすぐに口を開きました。 『は、はじめまして。わたしはエッダと言います。』 強く緊張した表情。
上ずった声で……しかし懸命に言葉を続けます。 『あなたと一度、お話がしたかったのです。 わたしは以前、新人の冒険者同士で冒険をしていました。 でも、リーダーだったアヴィールは、グリダニアで命を失いました……。』 『アヴィールは、最初にあなたを見かけてから、 ずっとあなたの話をしていました。 ……あの冒険者は、きっとできるやつだって。』 『アヴィールはわたしの婚約者だったんです……。 彼が亡くなったあと、冒険者を止めようと思いました。』
そこまで話すと、俯いた彼女の頬に流れる涙が。
まるで塞き止めていた川を放流するかのように溢れていました。
きっと今日のこの日まで誰かに話すことも、話せることもなく我慢し続けていたのでしょう。 その後も彼との思い出を彼女は話してくれたのですが、嗚咽の混じる言葉で私にはどうしても所々しか聞き取れませんでした。 涙が彼女の膝の上にある、おそらく"かつて彼だったもの"を包む風呂敷を濡らし、鉄の香りが急速に広がりました。 私はそれに異臭を覚えるよりも、彼女の立場を憐れみ言葉が出せないでいたのです。
まだ止まらない涙を、押さえつけるように片手で顔を覆い彼女は話します。
『私は……どうすればよかったんでしょうか……』 『何が……間違っていたのでしょうか……。』 覆われた手から覗くのは、普段の姿からは想像できないほど食いしばった歯と唇。 エッダさんの顎に伝う、涙交じりの血液。 まだ純白と呼べるほど白かった風呂敷は、さらに真紅に染まりました。 今すぐにエッダさんを抱きしめて、その重さを少しでも軽くしてあげたい。 ……その気持ちを押し殺して、私は頷き話を聞き続けました。 それが終わると―――かつてない重さの空気を持つ館の中で、占いは始まりました。 カードを重ねる順番だけ指差しで答えてもらうと、めくるカードを淡々と説明します。 彼女は時々頷きながら、ずっと俯いたまま……"彼"と見つめあったまま話を聞いてくれました。 占いを始めてすぐは、まるで興味がなさそうだったエッダさんでしたが 終わる頃には、めくったカードのコスプレにいそいそと着替える私を凝視して 時々笑顔を見せてくれるほどでした。 彼女の話は酷く悲痛で、聞いているだけでもつらい体験でした。 ……結果ですか?もちろん秘密ですが……。 その後の話をもう少しだけ教えましょう。 占いの結果を聞くと、エッダさんは冒険者を辞める念が強くなったようでした しかし穏やかな表情を俯き"彼"に向けると、彼女はつらさよりも新しい決心を胸に秘めた力強い声色に変わっていました。 『……でも、彼が言っていたように、 あなたの姿や戦うところを見ていると、 いつか、こういう冒険者になりたいと思ったのです。』 悩みが吹き飛びました。なぜ、私はこんなに悩んでいたんだろう? そう思わせるような明るい顔を私に向け、彼女は嬉しそうに……楽しそうに話しました。 『だから、田舎に帰って、 冒険者の修行を一からやり直すつもりです。』 ―――どんな結果が出ても、結果を伝えたとしても…… 最終的に決断をするのはいつもあなたです。 泣きすぎて目元が赤くなってしまってもにこやかに話すあなたの姿を、今でも覚えています。 『お話を聞いてくださって、ありがとうございました。 さようなら! また、来ますね!』 それから時は、現在に戻ります。
『初めまして!今日は宜しくお願いします!!』
わたくしは2回目ですが……でも、初めまして。
招待カードを送ったエッダちゃんに送ったところ、快く受けていただきました。
今日も、緊張した表情をしていらっしゃいますね。
2回目に会ったエッダちゃんも、占いにお持ちいただいた悩みがありました。 占いを通して……今の悩みに対し、少しだけ心休まった結果になったようです。
あの日できなかった…一緒にSSや、お互いに笑って、ポーズをとって 時間が余ったら、一緒にゲームもやりました。 エッダちゃんの時間ギリギリまで、その日は楽しい時間を過ごしました。 またお会いしましょうと……2回も、3回も言ってしまいました。 今日もあなたが、笑顔で過ごせますように。
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掴んだはずの幸せな未来が、指の間からこぼれ落ちていった時、 人はそれでも新しい別の未来を思い描くことができるのだろうか。 否、それができるのは、強き心の持ち主か、 支えてくれる者がいてくれた場合だけだろう。 では、心弱き者は、支えなき者はどうなるのか。 惨劇とは、たったひとりで辿り着いてしまった答えの先に、あるものなのかもしれない。 それは一通の手紙から始まる物語……。 惨劇霊殿 タムタラの墓所 コンテンツファインダーより